古語において「うきよ」には二つの意味がある。
一つは、「つらい世、無常の世」としての「憂き世」。
一つは、「楽しい現世、享楽的なこの世」としての「浮き世」だ。
<全訳古語辞典 旺文社>
きらら浮世伝には、後者の意の「うきよ」があてられている。
しかし、主人公・蔦屋重三郎を初めとする、多くの登場人物は「つらく、無常の世」を生きた。
「つらさ」でいえば、私達現代人も同じだろう。
過度に情報化した社会で、小さな画面に「人の影」を見て安心する私達は、十分に「憂き世」のつらさを味わっている。
この演劇に、私達は、<人間>を見る。
そして、彼らがどうして「憂き世」を、「浮き世」と呼び、強く生き抜けたかを知る。